世界の終わりと夜明け前 浅野いにお

久しぶりに衝動買いしたコミック。新刊の棚にならんでいて、表紙をみてすぐ決めた。こういう時のヒット確率は概ね4割程度。が、今回はホームランだった。間違いなく今年の自分評価ベスト10には入るコミック(このほかには「銃夢-LastOrder」「溺れるようにできている。」「純真ミラクル100%」などがノミネート中)。中身は作者の初期作品からの短編が収録されている。スリルとかサスペンスとかそういうのではないけど、高いエンターテイメント性を感じるものだった。精神的・肉体的に疲れている人(自分含む)に薦めたい1冊。ただ、単純な娯楽だけでコミックを読む人にはいまいちかも…。同作者のタイトル「ソラニン」が映画化とのこと。

世界の終わりと夜明け前 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

世界の終わりと夜明け前 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

ここからは完全な蛇足。
娯楽だけでコミックを読むことは無論間違ってない。そもそも、個人がどんな用途、目的で本を読むことは、それを描く・表現することと同様に自由だ。誰かがとやかく言うものではない。面白いから読む、楽しいから読む。漫画って本来そういうものだけど、日本の漫画ってそれ以上の価値がある。…と、自分は信じている。いわゆる勧善懲悪、ヒーローが悪の秘密結社を打ち破る話は王道であるし、爽快感があって面白い。ただ、これは自分個人の主観的感想なのだけど、こういった漫画って日本だけなのかもしれない。それは、日常を日常として描いてる中のちょっとした差異。自分と同じような環境、状況におかれた主人公が、まったく自分とは違う言動、想像を超えた発言をする物語。結末は必ずしもハッピーではないかもしれない。そこそこの会社をリストラされたそこそこのサラリーマンは、お話の終わりで大金持ちにはなれないかもしれない。でも、だからこそ主人公が見たもの、経験したものを読んでいる自分にフィードバックして、知識や経験として得ることができる。それが日本の漫画にはあると思う。
(そんなことはわかってんだよっ、っていう人は多いし、だからこそこういう本も読まれるんだろうなと思いつつ。最近このブログのカウンターが自分が想像していたよりも多くの来訪者がいることを教えてくれたので、今日はちょっと長く自分の意見を書いてみた)